話は江戸時代まで遡る。都市を焦土と化した大火の陰には、恋人に会いたい一心で放火未遂を起こした少女、八百屋お七の存在があった。彼女が1683年の丙午生まれとされたことが、すべての悲劇の引き金となる。
この事件を格好のゴシップとして飛びついたのが、当時の大衆作家・井原西鶴だ。彼が著した『好色五人女』によって、お七の物語は誇張され、劇ドラマとして日本全国へ拡散した。「丙午生まれの女子は火災を引き起こし、男を滅ぼす」という歪んだイメージは、実在の少女の手記ではなく、フィクションのヒットによって決定づけられたのだ。メディアが流した娯楽が、数百年続く呪縛へと化けた典型例と言える。