宇多田ヒカルと母・藤圭子の光と影|衝撃の別れと名曲『花束を君に』

宇多田ヒカルと母・藤圭子の光と影|衝撃の別れと名曲『花束を君に』

宇多田ヒカルと母・藤圭子の光と影|衝撃の別れと名曲『花束を君に』に関する専門家の意見を詳しく解説いたします。

2010年末から「人間活動」として音楽活動を休止していた宇多田ヒカルは、母の死という巨大な喪失を経験した後、約6年ぶりとなる2016年に音楽界へ復帰しました。その復帰作となったのが、フランス語で「気配」や「幻影」を意味するアルバム『Fantôme』です。

このアルバムの核となっているのが、NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』の主題歌として日本中を包み込んだ名曲『花束を君に』でした。一聴すると普遍的な別れのポップソングに聴こえますが、歌詞を読み解くと、母・藤圭子への尽きない感謝と、二度と会えない現実を受け入れるための痛切な祈りが込められていることが分かります。

「普段からメイクしない君がうっすら化粧した」というフレーズは、納棺の際の母の姿を想起させ、「涙色の花束」を手向けることで、生前には伝えきれなかった感謝と愛を捧げています。悲しみを叫び散らすのではなく、澄み切ったメロディと美しい日本語で紡がれたこの曲は、宇多田ヒカルが母の死を乗り越え、一人の表現者として新たな次元へと到達したことを証明する記念碑的な作品となりました。

中川 明日香
著者

中川 明日香

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。