作家・佐藤愛子の生き様を語る上で避けて通れないのが、波乱に満ちた結婚生活と元夫たちとの複雑な確執だ。彼女の著作を紐解くと、男たちの身勝手さや脆さ、そしてそれにブチ切れながらも引き受けてしまう彼女自身の業が生々しく描写されている。夫婦関係の破綻は、一見すると不幸な事故のように思える。だが、彼女にとっては自らの身を削って紡ぎ出す創作の最大のモデルであり、表現の源泉そのものだった。
世間がうらやむ平穏な家庭像とはほど遠い日常。しかし、夫たちとの熾烈な衝突や裏切りがあったからこそ、彼女のペンは冴え渡った。数々の名作に散りばめられたリアルな対話や人間心理の観察は、実際に修羅場をくぐり抜けてきた当事者にしか書けない重みに満ちている。実生活での苦痛を極限の文学的エンターテインメントに転化させた点に、作家としての凄絶な凄みがある。