テレビの世界で頂点を極める一方で、永氏が生涯を通じて最も愛し、こだわり続けたのがラジオというメディアだった。TBSラジオで40年以上の長きにわたる歴史を誇った『誰かとどこかで』は、リスナーからの便りを紹介しながら、飾らない言葉で語りかける伝説的番組として親しまれた。
マスメディアの一方的な情報発信ではなく、全国の職人、農家、主婦、子供たちの小さな呟きに耳を傾ける姿勢。ラジオの向こう側にいる「誰か」と心を通わせるそのスタイルは、彼のメディア観の原点であった。マイクの前で語られる日常の喜怒哀楽は、やがてベストセラー『大往生』の取材ルーツとなり、彼の人間観察の鋭さを養う土壌となったのである。