現場となった新宿区のマンションエントランスは、凄惨を極めていた。刃物で腹部を深く刺された男性が虫の息で倒れる傍ら、両足を赤く染めた高岡由佳は取り乱す様子もなく、静かに座り込んでいた。警察の到着を待つ間、知人に電話をかけ、煙草を吸い、ただ虚空を見つめていたという。
「好きで好きで仕方がなかったから刺した。殺して、私も一緒に死のうと思った」
逮捕直後の取り調べで彼女が吐露した言葉である。激しい憎悪ではなく、あまりにも純化されすぎた独占欲。他人に渡すくらいなら自分の手で命を絶ち、永遠にふたりだけの世界へ閉じ込めたいという破滅願望が、あの異様な佇まいを生み出していた。