三味線奏者を最も恐怖させるのが、ケースの中で保管していただけなのに「バンッ!」と銃声のような音を立てて皮が裂ける現象です。なぜ何の衝撃も与えていないのに皮は破れるのでしょうか。
皮が自壊する根本原因は、「湿気を吸って伸びた皮が、急激な乾燥によって急収縮し、自らの張力に耐え切れなくなること」にあります。三味線の皮は職人の手によって限界に近い高張力で胴に張られています。梅雨や夏場に多湿環境で水分を含んでわずかに緩んだ状態で、冬のエアコンの温風や乾燥した外気に晒されると、収縮しようとする強烈な応力が生じ、繊維が耐えきれずに裂開してしまいます。
破れを防ぐための現場直伝の対策として、以下の3点が必須とされています。
- 桐製胴板(胴ふた)の装着:皮の表面に桐の板を当ててゴムバンド等で固定し、外気との直接の接触を遮断する。
- 湿度調整剤の併用:密閉ケース内に和楽器専用の調湿シート(シリカクリン等)を同梱し、湿度50〜60%を一定に維持する。
- 急激な温度変化の回避:冬場の暖房直風や夏の車内放置は厳禁。ケースから出してすぐの演奏を避け、室温に馴染ませる。
また、破れていなくても「音に張りがなくなり、全体に音がこもる」「皮の表面を指で軽く押した際に弾力がなく、たるみを感じる」「胴と皮の接着面(フチ)から浮き始めている」といった兆候が現れたら、皮の寿命であり張り替え時期のサインです。