Web上のコミュニティやSNS、大手家電量販店の修理相談窓口には、誤ったお手入れによるトラブル報告が毎週のように寄せられている。特に近年の感染症対策の定着以降、家庭内でのアルコール除菌が習慣化したことで、無自覚にテレビ画面を拭いてしまい後悔するケースが急増した。
「リビングを除菌するついでに、子どもの手垢がついた画面をアルコールシートで拭いたら、乾いた後に白く曇って拭き跡が一切取れなくなった」「画面についた虫のフンをメラミンスポンジで軽く擦ったら、その部分だけコーティングが削れて真っ白な擦り傷になった」といった生々しい悲鳴は、決して珍しい話ではない。
こうした事態に陥った際、ユーザーをさらに打ちのめすのが修理見積もりの金額だ。液晶テレビや有機ELテレビにおいて、ディスプレイパネルは本体製造原価の60%から80%近くを占める中核部品である。表面のフィルムだけを張り替える技術は現場には存在せず、修理は「パネルユニット丸ごとのアセンブリ交換」となる。
大手家電量販店の修理サービスデータや家電補償窓口の基準によると、55インチクラスの4K液晶テレビでパネル交換を依頼した場合、技術料と出張費を含めて8万円から15万円程度の請求が発生する。これが薄型・高精細な有機ELテレビになると、部品代だけで15万円から25万円以上に跳ね上がり、本体の実売買い替え価格を上回るケースが大半を占める。さらに厄介なことに、取扱説明書の警告を無視した清掃による物損は、メーカーの無償保証期間内であっても「使用上の過失」と判定され、延長保証の対象外とされるケースが極めて多い。