ネット上の描き方解説やSNSの早描き動画を見ていると、「まず大きな丸を描いて顔の輪郭を取る」と教えているものが散見されます。しかし、初心者がこの手順を踏むと、高い確率でバランスが崩壊します。
任天堂の公式インタビューや開発秘話(『社長が訊く』等)でも語られている通り、マリオのビジュアルは「16×16ドットの極小画面で、いかに人間が走ったり跳んだりしているかを一目で判別させるか」という機能的制約から誕生しました。髪の毛の揺れを描くドット数が足りないから「帽子」を被せ、8ドット幅の顔の中で鼻と口を認識させるために「大きな鼻と口ひげ」を配置し、腕の振りを際立たせるために「オーバーオール」を着せたという経緯があります。
つまりマリオの本質は、「記号の集合体」です。輪郭という曖昧な枠からスタートしてしまうと、内側の記号(鼻・ひげ・目)のスケール感が狂い、結果としてマリオの記号性が薄れてしまいます。「鼻という中心記号を基準に、外側へパーツを積み増していく」手法こそが、デザインの成り立ちに即した最も合理的なマリオイラスト描き方なのです。