観光情報誌やSNSの華やかな写真を見ると「江ノ島=生しらす丼一択」という固定観念を抱きがちですが、これには大きな盲点が存在します。現場の漁師や地元住民の間では、実は釜揚げしらすと生しらすの違いを理解した上で、あえて釜揚げしらすや両方を盛った「ハーフ&ハーフ丼(二色丼)」を選ぶ人が圧倒的多数を占めています。
生しらすは透明でプチプチとした独特の弾力と、ほのかな苦味を含んだ磯の香りが魅力です。しかし、鮮度落ちが極めて早く、水揚げから時間が経過すると特有のドリップが出て身が溶け始め、生臭さやえぐみが増してしまう難点があります。一方で「釜揚げしらす」は、水揚げ直後の新鮮なしらすを絶妙な塩加減の熱湯で素早く茹で上げているため、ふっくらとした柔らかさと凝縮されたアミノ酸の甘みが際立ちます。
「生しらす丼を頼んだが、後半は苦味が気になって重く感じた」という初訪問者の声は珍しくありません。素材そのものの旨味を白米とともにかきこむ快感を求めるなら、熟練の職人が茹で上げた釜揚げしらすの完成度は極めて高く、決して生しらすの下位互換ではないという事実を知っておくことが肝要です。