「高額な歯科矯正費用を払わずに、自力で口元の突出感を解消したい」と願う読者にとって、最も気になるのは口ゴボマッサージ効果の真相でしょう。結論から述べると、マッサージによって「顎の骨が引っ込む」「前歯が後ろに下がる」という解剖学的な変化は一切起こりません。
口元の突出は、皮膚や皮下脂肪、筋肉といった「軟組織」の奥にある「歯槽骨(歯を支える骨)」および「歯牙そのものの傾斜」、あるいは「上下顎骨の骨格的アンバランス」によって形成されています。手や美顔ローラーで外側からいくら圧力を加えても、骨や歯を安全かつ永続的に移動させることは不可能です。歯科矯正で歯を動かす際は、数グラムから数十グラム単位の持続的かつ微小な力を歯根膜にかけ、骨の吸収と再生をコントロールする高度な医療技術が用いられます。素人が断続的かつ強い力で揉んだり押したりしても、骨格が後退することはあり得ません。
それでは、なぜネット上では「マッサージで口ゴボが治った」という声が存在するのでしょうか。その背景にあるのが、下唇の下から顎先にかけて広がるオトガイ筋ほぐし効果です。口ゴボの人は、口元が前に出ている構造上、口を閉じようとするときに無意識に下唇を強く引き上げます。その結果、顎先に梅干しのようなシワができ、オトガイ筋が異常に緊張して硬化・肥大化します。マッサージによってこの筋肉のこわばりやむくみが取れると、一時的に顎先の緊張が和らぎ、視覚的にすっきりした印象を受けることがあります。つまり、得られるのはあくまで「筋肉の過緊張の緩和とむくみの改善」による一時的な変化に過ぎず、口元の突出そのものが治ったわけではありません。