著名人が大病を患った際、記者会見を開いて闘病を告白し、世間の共感や応援を集めるケースは少なくありません。しかし本田圭佑は、首の手術痕が全世界に中継され、メディアから病気について問われても、現在に至るまでバセドウ病について公式な言及を行っていません。
当時の特番インタビューや自著、手記の中で彼が一貫して語っていたのは、「言い訳を作らない」という冷徹なまでのプロ意識でした。欧州の過酷な競争社会において、自ら病気や肉体のハンディキャップを公にすることは、対戦相手に弱点を晒し、クラブ経営陣や指揮官に対して使わない理由を与えることに他なりません。「ピッチに立つ以上、体調不良も怪我も関係ない。結果がすべて」という信念を地で行く彼にとって、病気公表による同情などプライドが許さなかったのです。
SNSやネット掲示板では、容姿の変化を面白半分に取り上げる心無い声が一部で見られた一方、首の傷跡の意味に気付いた熱心なサポーターの間では「どれだけの激痛と苦しみを抱えて走っていたのか」「言い訳一つせずW杯で結果を残す姿に震えた」と、畏怖とリスペクトの念が急速に広がっていきました。報道の過熱をよそに、沈黙をもって自らのプレーで語る姿勢こそが、本田圭佑というアスリートの本質を雄弁に物語っています。