ネット上のQ&Aサイトを眺めると、「自然数には0が含まれると教授に言われた」「海外の教科書には0∈ℕと書いてある」といった意見を目にして混乱する読者が散見されます。この現象の背景には、学術分野ごとの歴史的・実用的な立場の違いが存在します。
実は、数学の基礎論や大学以降の高等数学、あるいは情報科学(コンピュータサイエンス)の世界では、自然数に0を含める流儀(Natural numbers starting at 0)が広く採用されています。数学の厳密な枠組みである「ペアノの公理」において0を出発点とする構成法が美しく、国際標準化機構が定める規格(ISO 80000-2)でも、自然数の集合 $\mathbb{N}$ には0を含め、0を含まない集合は $\mathbb{N}^*$ や $\mathbb{N}_{>0}$ と区別して表記することが標準化されているためです。
しかし、文部科学省の学習指導要領に従う日本の初等・中等教育(高校までのカリキュラム)では、児童・生徒の直感的な数の理解を最優先とし、「自然数=正の整数(1, 2, 3…)」と完全に統一されています。大学入学共通テストや各大学の一般入試においても、問題文に特別な注釈がない限り、この高校までの定義が絶対的な前提として運用されます。ネット上の高等理論に惑わされず、「受験数学・学校数学の世界では0を絶対に入れない」という割り切りを持つことが、失点を防ぐ最大の知恵です。