志村さんのコントの真骨頂は、一度見たら脳裏から離れない強烈なキャラクター造形にあります。「変なおじさん 誕生秘話」を振り返ると、歌手の千昌夫さんとの楽屋でのふざけ合いが原型でした。志村さんが変装して楽屋へ突撃する悪戯を楽しんでいたところ、これをテレビコントに応用することを決意。パトロール員を自称しながら女性にちょっかいを出し、田代まさしさんらに問い詰められると「なんだチミはってか? そうです、私が変なおじさんです」と居直って奇妙なダンスを踊り出します。被害者を巻き込みながら最後は全員で踊ってしまう展開は、不条理でありながら祝祭的なカタルシスを生み出しました。
志村けんのキャラクター人気を不動のものにしたもう一つの柱が「志村けんのバカ殿様」です。白塗りの顔に極太の眉、頭頂部で揺れるチョンマゲという異様な出で立ち。「嬉しいなぁ」「あ・え・い・う・え・お・あ・お」といったバカ殿様の名セリフは、権力者が童心を剥き出しにして悪戯に興じる解放感を体現していました。家臣たちを翻弄しながらも、どこか憎めない愛嬌を湛えているからこそ、何十年にもわたって特別番組として放送され続けました。
そして、演劇関係者や批評家からも最高峰のリアリズムと絶賛されたのが「ひとみ婆さん」です。この「ひとみ婆さん モデル 真相」には、志村さんの徹底した観察眼が凝縮されています。志村さんが若手時代に通っていた飲食店や浅草の居酒屋、地方旅館に実在した高齢の仲居さんがモデルです。注文を取りに来てはお茶をこぼし、客の言葉を激しく聞き間違え、終始「ふぇっふぇっふぇ」と震えながら息を漏らす。デフォルメされてはいるものの、動作の節々に見られる腰の曲がり方や擦り足のスピードは完璧に計算されており、単なる物真似を超えた人間賛歌の領域に達していました。