本作のもう一つの見どころは、主人公を巡る男性陣の目覚ましい内面模様の変化だ。世渡り上手を装いながら裏で屈折した愛情を抱いていた慎二は、凪との対立と対話を通じて、自らの仮面を脱ぎ捨てる勇気を得た。素直になれない痛々しい不器用さが、物語の進行とともに人間味あふれる魅力へと変貌していった背景には、彼の深い苦悩があった。
危険な包容力で人をダメにしてきたゴンもまた、凪との出会いによって「誰かを本気で愛し、失う怖さを知る」という人間的な成長を遂げた。かつてのような無差別な甘やかしではなく、相手の幸せを心から願う本物の愛を知ったことで、彼の生き方自体が大きく変わり始める。凪を巡る攻防は、ふたりにとっても「男としての自立」を促す重要な試練だったのだ。