下半身には全身の血液の約7割が集まっています。直立二足歩行を行う人間にとって、足元まで降りてきた血液を重力に逆らって心臓へと送り返す作業は、心臓単体の力だけでは賄いきれません。ここで決定的な役割を果たすのが、ふくらはぎのヒラメ筋や腓腹筋(ひふくきん)です。
筋肉が収縮と弛緩を繰り返す際、内部を走る深部静脈が外側からリズミカルに圧迫されます。この現象はミルキングアクション(筋ポンプ作用)と呼ばれ、静脈内にある逆流防止弁の働きと連動して血液を力強く心臓へ押し上げます。ふくらはぎが「第二の心臓」と称される最大の根拠がここにあります。
筋肉のポンプが活発に動くと、血管内を流れる血液のスピードが増し、血管の内壁を覆う血管内皮細胞に適度な摩擦刺激(ずり応力)が加わります。この刺激に反応して分泌される物質こそが一酸化窒素(NO)です。NOには硬くなった血管の平滑筋をゆるめて血管を広げる強力な作用があり、末梢血管の抵抗が下がることで血圧が自然と降下します。
第二の心臓としてのふくらはぎ降圧作用は、単に血行を促すだけでなく、自律神経のバランスを整えて交感神経の緊張を解く相乗効果も持ち合わせています。つまり、ふくらはぎ 血圧を下げる理由は、物理的な循環の改善と、NOによる化学的な血管拡張という二重のシステムに基づいているのです。