本作を語る上で避けて通れないのが、東帝大学病院の元院長・蛭間重勝を演じた西田敏行さんの存在です。2026年10月17日、本作の公開を目前に控えたタイミングで西田さんは76歳で急逝。本作が西田さんの俳優人生における正真正銘の映画遺作となりました。
劇中における蛭間と未知子の攻防は、まさに圧巻の一言です。晶が差し出す法外な請求書とメロンに「メロン、もう見たくないんだよ!」と喚き散らしながらも、未知子の圧倒的な腕前に屈服せざるを得ない蛭間の滑稽さと哀愁。試写会での共演者たちの証言によると、病室や院長室でのシーンの多くは西田さんの即興アドリブによって彩られ、米倉さんも内田有紀さんも本気で笑い、そして涙を堪えながらカメラの前に立っていたといいます。
権力に執着しながらも、どこか人間臭く憎めない蛭間重勝という怪物は、西田敏行という名優の人間味そのものでした。完成披露の場で米倉さんが「西田さんがいなければ、大門未知子はここまで大きく羽ばたけなかった」と涙ながらに語った言葉は、10年以上に及ぶ2人の魂のセッションの深さを物語っています。