大相撲の土俵で懸けられる懸賞金は、2019年9月場所の改定以降、1本当たり7万円(消費税非課税扱い・手数料込)となっています。企業の宣伝として土俵上を回る懸賞旗は、1本につき7万円のスポンサー料が日本相撲協会へ支払われることで掲出されます。
しかし、勝利した力士が手にするのし袋の中に7万円がそのまま入っているわけではありません。日本相撲協会の規定により、7万円は以下のように厳格に配分されています。
最も特徴的なのは、獲得した力士の取り分である6万円のうち、半分にあたる3万円が現金として土俵上で手渡され、残り3万円が納税充当金として相撲協会預かりになる点です。さらに、残る1万円は取組表への企業名掲載や懸賞旗の持ち運び、事務管理を担う日本相撲協会の事務経費(手数料)として天引きされます。
勝った力士が土俵上で手刀を切り、行司から受け取るあの分厚いのし袋の中身は、懸賞の本数分の「3万円の現金」です。仮に結びの一番で懸賞が50本懸かっていた場合、スポンサーが支払った総額は350万円に達しますが、その瞬間に行司から力士へ渡される現金は150万円(3万円×50本)となります。
なぜこのような複雑な仕組みが取られているのか。その理由は、大相撲力士特有の雇用形態と税務リスクにあります。
大相撲の関取(十両・幕内)は日本相撲協会と契約を結ぶプロアスリートであり、税法上は「個人事業主」に分類されます。年俸(月給や各種手当)に加えて数千万円単位の懸賞金を獲得すると、翌年に課される所得税や住民税は数千万円規模に跳ね上がります。過去、若くして大金を手にした力士が税金の支払いに窮する事態を防ぐため、相撲協会は獲得額の半分を強制的に力士名義の定期預金口座へ積み立てる「納税充当金」制度を確立しました。この積立金は、確定申告時の納税に充てられ、引退時には残額が本人へ精算・返還されます。