教育虐待の温床となりやすい現場の筆頭が中学受験です。都市部を中心に過熱する受験競争では、公立小学校の1クラスのうち2人から3人に1人が受験に参入するエリアも珍しくありません。大手進学塾のハイペースなカリキュラム、毎週のように発表される公開模試の偏差値とクラス昇降システムが、親を容赦ないプレッシャーへと巻き込みます。
取材に応じた私立中学進学塾の元講師は、現場の歪みを次のように証言します。「模試の結果が貼り出されるロビーで、小4の我が子を他の保護者の前で平手打ちする母親がいました。『あんなにお金をかけたのに恥をかかせるな』と泣き叫んでいたのです。家庭内ではさらに凄惨で、宿題が終わらないという理由でノートを破り捨てる、夜中の2時まで立たせて計算ドリルを解かせる事例が毎年のように報告されます」。
ここで特筆すべきは、教育虐待と母親の過干渉が密接に結びつきやすい構図です。父親が仕事にかまけて家庭教育を母親一人に丸投げ(ワンオペ化)し、母親自身が「子どもの合格=自らの子育ての通信簿」という逃げ場のない重圧を背負い込みます。ママ友グループ内の序列意識やSNSで飛び交う「小3からの課金レース」「御三家合格メソッド」といった情報が、親の焦燥感に拍車をかけます。
知恵袋や当事者コミュニティには、「母の足音が聞こえるだけで息が詰まる」「リビングの防犯カメラで勉強の姿勢を24時間監視されていた」という生々しい告白が溢れています。密室化した家庭内において、過剰な干渉は「子どもの将来を救う正義」へと歪められ、外部からの制止が極めて届きにくい泥沼へと発展していくのです。