サスペンスドラマの白眉である「真犯人は一体誰なのか」という謎。二つの日本版『逃亡者』は、それぞれ異なるアプローチで視聴者の予想を鮮やかに裏切る結末を用意していました。
テレビ朝日版で渡辺謙が演じたエリート外科医・加倉井一樹を陥れた黒幕は、長年の親友であり同僚医師だった宮島光彦(杉本哲太)です。事件の引き金となったのは、加倉井が治験責任者を務めていた新薬「ネクスト」の副作用データでした。加倉井が重篤な肝機能障害を見抜いて承認に反対したため、製薬会社「富士製薬」と結託した宮島が巨額の利権を守るべく、義手の殺し屋・嶋脇(池内博之)を雇って加倉井の殺害を企てました。しかし、凶行の夜に在宅していた妻・陽子(夏川結衣)が標的となり、その場に居合わせた加倉井が身代わりの冤罪を背負わされるという痛ましい構図でした。劇中序盤、宮島が加倉井にかける「お前は真っ直ぐすぎる」という労わりの言葉が、終盤において冷酷な裏切りの伏線として見事に反転する演出は圧巻でした。
一方、江口洋介が保護司・永井徹生を演じたTBS日曜劇場版の結末は、より社会の暗部に切り込んだ多重構造となっています。永井の妻と息子を惨殺した直接の実行犯、そして警察の捜査情報を操作して永井を追い詰めた真の黒幕は、阿部寛演じる峰島刑事の同僚であり信頼されていた相棒・国枝真澄(加藤浩次)でした。背後には巨大製薬会社「ナノ製薬」の未承認薬を巡る臨床試験偽装スキャンダルがあり、国枝は病床の家族を救うための金銭欲と組織の保身に絡め取られていました。自らの身の潔白を叫ぶ永井の悲痛な叫びと、正義の執行者であるはずの警察官が放つ歪んだ論理が激突した最終回は、当時のテレビ界に大きな衝撃を与えました。