天の助を語る上で欠かせないのが、ひらがなの「ぬ」に対する常軌を逸した執着と、それにまつわるアイテム・名言の数々です。中でも「ぬのハンカチ」は、中央に「ぬ」とだけ大書された単なる布切れでありながら、作品を象徴する伝説的アイテムとして親しまれています。
「ぬ」を愛し、「ね」の文字を見ると激しい拒絶反応と怒りを見せるという不条理なこだわりは、読者に強烈なインパクトを残しました。作中では以下のようなところ天の助の名言(迷言)が数多く誕生しています。
- 「ぬ」
- 「ところてんだからさ……」
- 「オレの体はところてん!切られたって痛くもかゆくもねえのさ!」
- 「メルヘンめいた世界を貴様に見せてやろうか!」
この特異なキャラクター性の元ネタは、日本の伝統的な涼味菓子である「ところてん(心太)」そのものです。安価で庶民的、水分を多く含み柔らかいという物理的性質を、澤井啓夫先生の卓越した発想力によって「戦闘能力」兼「ギャグの起点」へと昇華させました。天の助のネットの反応を分析すると、SNS上では「ぬ」の一文字だけで数万件のリポストが集まる現象が2020年代半ばを過ぎても度々観測されており、シンプルながら完成された記号性が窺えます。