ネット上のレビューで時折見かける「肉がゴムのように固くて噛み切れない」という低評価。ここには、日本の鶏肉流通における根深い誤解と、宮崎固有の食文化が絡み合っています。
一般的にスーパー等で流通しているブロイラー(若鶏)の飼育期間はわずか50日前後であり、肉質は柔らかく水分に富んでいます。対して宮崎で「炭火焼き」として供される鶏には、大きく分けて特定現種として国が定めたJAS規格の高級ブランド「みやざき地頭鶏(じとっこ)」と、約400日以上かけて卵を産み終えた「親鶏(種鶏・採卵鶏)」の2種類が存在します。
本場の居酒屋や地元民に愛され続けてきたクラシックな炭火焼きの多くは、実はこの「親鶏」を使用しています。成鶏の筋肉は日々の運動と長期飼育によって筋繊維が非常に太く発達しており、噛む力を必要とします。しかし、肉の中に蓄えられた遊離アミノ酸や旨味成分であるイノシン酸の含有量は若鶏の数倍に達します。つまり、固いと感じる弾力こそが濃厚なエキスの貯蔵庫であり、咀嚼するたびに旨味が染み出してくる仕掛けになっているのです。
一方で、ブランド地鶏である「みやざき地頭鶏」は、オス約120日、メス約150日という手間ひまをかけた平飼い環境で育てられ、しっかりとした歯ごたえの中にも上質な脂の甘みと適度な柔らかさを兼ね備えています。「硬派なアゴの運動を楽しみたいなら親鶏」「洗練された肉汁と絶妙な弾力を味わいたいならみやざき地頭鶏」という明確な住み分けが存在します。