どれほど捜索を尽くしても、年間に数百人から千人前後の人々が何年経っても見つからず、失踪事件における未解決の真相として闇に埋もれていきます。山岳地帯での滑落、海沿いでの投身による遺体未回収、偽造身分証を用いた完全潜伏、そして第三者が関与した重大事件への巻き込まれなどがその背景にあります。
失踪者が長期間見つからない場合、残された家族は精神的な苦痛だけでなく、法的な「宙ぶらりん」状態に直面します。銀行口座の凍結解除、不動産の名義変更、配偶者の再婚、生命保険金の請求などが一切行えなくなるためです。この法的膠着を打開するために用意されているのが、日本の民法に定められた失踪宣告の手続きと要件です。
失踪宣告には2つの区分が存在します。
- 普通失踪(民法30条1項):不在者の生死が7年間明らかでないとき。家庭裁判所に申し立てを行い、審判が確定すると「7年の期間満了時」に死亡したものとみなされる。
- 危難失踪(民法30条2項):戦争、船舶の沈没、震災などの危難に遭遇し、その危難が去った後1年間生死が不明なとき。危難が去った時に死亡したものとみなされる。
失踪宣告の申立手続きは、配偶者や相続人などの利害関係人が不在者の従来の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。家庭裁判所による調査、官報公告(3カ月〜6カ月以上)を経て審判が下されますが、申立から確定まで約半年から1年以上の期間を要します。
宣告が確定すれば法的に死亡扱いとなり、遺産分割協議や保険金の受給が可能になります。しかし、もし後から本人が生きて現れた場合には、家庭裁判所に「失踪宣告の取消し」を申し立てる必要があり、相続された財産の返還問題など極めて複雑な法的処理が発生します。