男性が就寝中や起床時に経験する現象に対しては、長年根強い偏見が存在してきた。しかし、泌尿器科学において朝立ちの生理的メカニズムは、夜間睡眠時勃起現象(Nocturnal Penile Tumescence: NPT)と呼ばれる重要なバイタルサインとして位置づけられている。
健康な成人男性の場合、レム睡眠(浅い眠り)の周期に合わせて一晩に3回から5回、1回あたり約20分から40分にわたって無意識の勃起が発生している。その積算時間は睡眠全体の2〜3時間に及ぶ。この現象が起きる決定的な目的は「組織への酸素供給」だ。陰茎海綿体は平時には収縮して血流が制限されているため、低酸素状態が続くと組織の繊維化や機能低下を招く。自律神経は睡眠中のレム睡眠を利用して新鮮な動脈血を送り込み、組織の柔軟性と血管機能を維持するメンテナンスを自動的に実行している。朝方に目が覚めたタイミングがたまたま最後のレム睡眠と重なった際、可視化されたものが「朝立ち」である。
同様に、思春期以降の未婚男性や長期にわたり射精機会のない成人に見られる夢精が起きる理由と対策も、生体の防衛機構に他ならない。精巣で作られた精子は精嚢や前立腺液と混ざり合って蓄積されるが、許容量を超えると身体は睡眠時の副交感神経緊張を利用して自然放出を行う。自慰行為や性交渉による定期的な射精があれば頻度は減少するが、夢精そのものは性的な退廃ではなく、古くなった分泌物を排出し生殖機能を健常に保つための自動リセット機能である。