なぜ日本人は、虎という本来日本列島に生息していなかった動物に対して、これほど豊かな怪異イメージを膨らませることができたのだろうか。日本民俗学の観点から紐解くと、大陸から渡ってきた絵画や掛け軸、仏教美術に描かれた「未知の脅威」としての虎が、土着の和風ホラー的感性と結びついたことが大きな要因とされる。
実物を見たことがない古代の日本人は、渡来画に描かれた虎の姿に「神罰」や「山神の化身」といった怪異的な解釈を付け加えた。この「目に見えない恐怖を視覚化する」という民俗的な営みこそが、現代のダークファンタジー作品の根底に流れる、どこか湿り気のある恐怖描写の源流となっているのだ。