そもそも、なぜ60歳という節目の歳を特別視するのでしょうか。その理由は十干と十二支を掛け合わせた「干支」の仕組みにあります。干支の組み合わせは全部で60種類あり、自分が生まれた年の干支に戻るまでにちょうど60年を要します。つまり「歴(暦)が還る(めぐる)」ことから還暦という名がつき、一巡して生まれた年の暦に戻る=「生まれた時の赤子に還る」という思想が根底にあります。
歴史的な文脈を紐解くと、中国古代の思想家である孔子は『論語』の中で「六十にして耳順(みみがしたが)ふ」と残しました。これは60歳を迎えると他者の言葉を素直に受け入れられる境地に達するという意味であり、人間的な成熟を象徴する年齢とされてきたのです。長寿祝いの起源には、単なる加齢への祝福だけでなく、人生の円熟期を迎えた人物に対する敬意と、生まれ変わりとしての再出発を願う深い祝意が込められています。