原作著者である長谷川町子が戦後間もない時期に描き始めた『サザエさん』は、元々は新聞連載の日常系ギャグ漫画としてスタートした。当時の日本は高度経済成長期に向かう途上にあり、都市部における住宅不足や借家をめぐる問題は社会的な関心事でもあった。マスオとサザエの借家退去のエピソードも、当時の社会風刺とユーモアを掛け合わせた長谷川町子ならではの妙技と言える。
戦後日本の暮らしや家族像をコミカルに描き切った本作は、やがて国民的なファミリーアニメへと進化を遂げた。マスオの実家が大阪という遠方に設定されたことも、地方から上京して都内で働くサラリーマンという、当時の典型的な若者像を反映したものであった。こうした時代背景を理解すると、一見何気ないアニメの裏設定にもより深い味わいが生まれてくる。