実際に現地へ足を踏み入れた際、見逃してはならない鑑賞の急所がいくつか存在します。
第一のハイライトは、「上段の間」から望む主庭園です。加賀藩11代藩主・前田治脩を迎えるために特別に設えられたこの部屋は、天井に総檜が用いられ、紫檀や黒檀を使った緻密な細工が施されています。狩野派の絵師・佐々木泉景が描いた山水画の襖絵に囲まれながら縁先へ進むと、池にかかる自然石の橋、灯籠、そして幾重にも折り重なる植栽が視界いっぱいに広がります。水のせせらぎと落水の音が、外部の街の音を完全に遮断し、心地よい静寂を作り出します。
さらに奥へ進むと、石段を登った2階に茶室「不莫庵(ふばくあん)」が静かに佇んでいます。ここではわずか300円の志納金で、干菓子とともに点てたばかりのお抹茶をいただくことができます。
不莫庵の魅力は、お茶の味わいだけにとどまりません。1階の濡れ縁から見上げていた庭園の木々や瓦屋根を、今度は見下ろすアングルから鑑賞できる点にあります。樹木の梢と同じ目線で過ごす時間は、1階での体験とはまったく異なる浮遊感と静けさを提供してくれます。
また、展示室「鬼川文庫」には、野村家に伝来した刀剣や甲冑、前田利家直筆の書状などが陳列されており、加賀藩士のリアルな生活と精神性に触れる貴重な一次史料として必見です。