冠動脈の血流障害によって心筋が酸素不足に陥る虚血性心疾患の心電図変化は、ST部分とT波に明確な異常となって現れます。胸痛や圧迫感を訴える患者の波形判読では、ミリ単位のST変化に目を凝らす必要があります。
とりわけ緊急性が極めて高いのがST上昇型心筋梗塞(STEMI)です。冠動脈が完全に閉塞した直後から、障害部位に対応する誘導でJ点(QRSの終わり)からST部分が弓状に持ち上がります。発症初期には尖鋭化したT波(巨大T波)が現れ、進行とともに異常Q波の出現や冠性T波(陰性T波)へと推移していくのが特徴です。
一方で、ST低下やT波の平坦化・陰転化は、心内膜下虚血や非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)、あるいは労作性狭心症などで典型的に確認されます。心筋障害の範囲が広がる前に、誘導ごとの変化から閉塞冠動脈(前下降枝・回旋枝・右冠動脈)を推定し、緊急カテーテル治療へ繋げる判断が現場では欠かせません。