大坂なおみ選手が世界的なアイコンとなった契機であり、同時に最も複雑な感情を呼び起こしたのが2018年全米オープン決勝でした。憧れの女王セリーナ・ウィリアムズ選手との対戦は、テニス史に残る大波乱の展開を迎えました。
試合中、セリーナ側へのコーチング違反警告を皮切りに、ラケット破壊によるポイントペナルティ、審判への暴言によるゲームペナルティが科され、会場のアーサー・アッシュ・スタジアムは異様なブーイングに包まれました。その極限状態のなか、当時20歳の大坂選手は感情を乱すことなく完璧なテニスを貫き、ストレート勝ちを収めました。
表彰式でサンバイザーを目深にかぶり、「こんな終わり方ですみません。試合を見てくれてありがとう」と涙ながらに語った姿は、世界中のファンの胸を締め付けました。当時の特番インタビューや手記において「子どもの頃から夢見ていた瞬間だったが、全員が悔しがっているように見えて悲しかった」と吐露されたこの出来事は、彼女が真のチャンピオンとして精神的に覚醒する決定的な分岐点となったのです。