インターネット上の掲示板やSNSでは、老犬の夜泣きに関して科学的根拠を欠く精神論や誤った情報が氾濫しています。その代表例が「睡眠薬や精神安定剤を使うのは飼い主のエゴであり、愛犬の寿命を縮める」という根強い批判です。
しかし、近年の小動物臨床獣医学における共通認識は全く異なります。夜通し鳴き叫び徘徊を続ける犬自身も、極度の交感神経過緊張とコルチゾール(ストレスホルモン)の大量分泌に晒されており、心臓や脳血管に甚大な負荷がかかっています。適切な老犬夜泣き用睡眠薬と鎮静剤(トラゾドンやガバペンチン等)の投与は、犬自身を過酷なパニック状態から解放し、尊厳ある安息をもたらすための真っ当な「疼痛・ストレス緩和治療」です。
「自然なまま看取るのが愛情」という思い込みから受診を先延ばしにし、結果として飼い主が限界を迎えて共倒れになるケースこそ避けるべき悲劇です。「夜間に2時間以上の連続した夜鳴きが週に3日以上続く場合」、あるいは「日中の旋回運動や呼びかけの無視が目立ち始めた段階」が、躊躇なく動物病院へ駆け込むべき受診のデッドラインです。