立原道造の初登場は、ポートマフィアの冷酷な武闘派集団「黒蜥蜴」の十人長としての姿でした。鼻に貼った絆創膏、短気で好戦的な言動、そして仲間である広津柳浪や銀と繰り広げる軽妙なやり取りは、裏社会に生きる典型的な若手構成員そのものでした。しかし、その日常は高度に計算された「擬態」に過ぎませんでした。
「天人五衰」の計略によって武装探偵社が国家反逆の濡れ衣を着せられた際、国家最高峰の治安維持部隊である特殊部隊「猟犬」が表舞台に現れます。その最後の一員、第5の隊員(階級:伍長)として隊服を纏い現れた人物こそが立原道造でした。公式設定資料や劇中描写が示す通り、彼は長年にわたりポートマフィアの動向を監視し、内部から壊滅の糸口を掴むために送り込まれた軍警の正規潜入捜査官だったのです。
黒蜥蜴時代に見せていた粗暴な振る舞いは、過酷なスパイ任務を遂行するための防壁でありながら、同時に彼の根底にある人間らしさの表れでもありました。非情な軍事組織と情愛の滲む裏社会という、水と油のような二つの組織に身を置いたことが、後の彼の運命を大きく狂わせていくことになります。