満洲という広大な大地を舞台に、架空都市の誕生と崩壊を圧倒的なスケールで描き切った『地図と拳』。集英社から世に放たれたこの大作は、第168回直木三十五賞を受賞し、著者のリテラシーと筆力を世に知らしめた金字塔となった。歴史小説の重厚さと、どこか乾いた構造主義的アプローチが見事な調和を見せている。
架空の都市「李家鎮」を軸に据えながら、実在の史実を精緻に編み込む。読者はいつしか、何が史実で何が虚構なのかという境界を見失う。歴史の必然とは何か、人間の意志とはどこまで無力で、同時に強固なものなのか。巨大な建造物を緻密に設計するかのような構成力は、現代の文壇において稀有な輝きを放っている。