嵐山モンキーパークいわたやまが世界中から高い倫理的評価を得ている最大の理由は、その飼育展示のアーキテクチャにあります。通常の動物園では動物が檻に閉じ込められますが、ここでは「人間が頑丈な金網で囲まれた休憩小屋に入り、外にいる自由なサルへ金網越しにおやつを手渡す」という逆転の構造(リバース・ズーケージング)が採用されています。
この仕組みは、サルが人間を襲って食料を強奪する事故を物理的に防ぎ、野生の緊張感を維持するための画期的な安全策です。しかし、屋外の広場では約120頭のサルが人間の足元を自由に歩き回っています。事故なく滞在を楽しむためには、厳格に定められた行動規範の遵守が求められます。
入園時に徹底案内される基本原則は以下の4点です。
第一に、サルの目を正面からじっと見つめないことです。霊長類の社会において、凝視は威嚇や敵対のサインを意味します。可愛いからと至近距離で目を覗き込むと、威嚇音を上げられたり飛びかかられたりする危険があります。
第二に、屋外広場では絶対に触らないこと、そして人間の食べ物や飲み物を露出させないことです。手荷物のポケットからビニール袋やペットボトルが見えているだけで、サルは「中にエサがある」と学習し、奪い取ろうと接近してきます。飲食は密閉された休憩小屋の中だけで完結させるのが鉄則です。
第三に、小さな子どもから目を離さず、しゃがみ込んで写真撮影をしないことです。人間の体勢が低くなると、サルは自分より序列が下であると認識し、強気な態度に出ることがあります。カメラを構える際は立ったままの姿勢を保ち、適度なソーシャルディスタンスを保つ姿勢が不可欠です。