大相撲の番付を語る際、ネット空間で頻繁に誤解されているのが「番付運」と呼ばれる現象の正体です。「同じ8勝7敗なのに、なぜ場所によって昇進幅が違うのか?」という疑問に対し、AIや自動計算ツールのような単純な加点減点方式を当てはめようとするファンは少なくありません。
しかし、大相撲の番付編成における絶対的な盲点は、「番付は絶対評価ではなく、完全な相対評価である」という点です。例えば、自分が前頭3枚目で8勝7敗と勝ち越したとしても、上位陣(三役)が全員勝ち越して空き枠が1つも生じなければ、三役へ上がることは不可能です。逆に、上位陣総崩れで空席が3枠もできれば、前頭5枚目付近からでも一気に小結へ滑り込めるケースが存在します。これがファンの間で「番付運」と称されるものの正体です。
さらに、見落とされがちなのが「東優位の原則」です。古くから大相撲では「東は日出づる方角、陽の当たる場所」として尊ばれ、同じ「関脇」や「前頭筆頭」であっても、東に配置された力士が実質的な上位者として扱われます。控室の場所、土俵へ上がる方角、本場所前の取組編成会議での扱いなど、東と西には目に見えない明確な序列が存在します。ネット上の「西でも東でも同じ三役だから関係ない」という言説は、現場の力士が背負うプライドの重みを捉え違えた誤解に過ぎません。