食品の安全係数はなぜ100なのか?賞味期限0.8の計算と基準の真相

食品の安全係数はなぜ100なのか?賞味期限0.8の計算と基準の真相

食品の安全係数はなぜ100なのか?賞味期限0.8の計算と基準の真相とは一体何なのか? 専門的な分析を丁寧に紐解いて紹介します。

食品添加物のリスク評価や残留農薬の基準値設定において、中核をなす指標が一日摂取許容量(ADI: Acceptable Daily Intake)です。ADIとは、人間がある物質を一生涯にわたって毎日摂取し続けても、健康への悪影響が出ないと推定される一日あたりの摂取量を指します。

このADIを算出する際、基準となるのが動物実験で得られる無毒性量(NOAEL: No Observed Adverse Effect Level)です。NOAELは、ラットなどの実験動物に物質を長期間投与しても何ら毒性影響が認められなかった最大投与量を意味します。そして、このNOAELを「100」という安全係数(不確実性係数)で割った値が、人間に対する許容量として定められます。

なぜ「10」でも「50」でもなく「100」なのか。その根拠は、毒性学における2つの大きな不確実性を数値化した掛け算にあります。

第1の要素が「種差(しゅさ)」です。実験動物(マウスやラット)と人間では、体重あたりの代謝速度や解毒能力、感受性が異なります。一般的に人間は小型の実験動物よりも化学物質に対する感受性が高いと仮定され、この生物種の違いを補正するために「10倍」のマージンを取ります。

第2の要素が「個体差」です。人間同士であっても、体質や年齢、健康状態、性別、遺伝的背景によって影響の受けやすさは千差万別です。屈強な成人男性から、解毒機能が未発達な乳幼児、免疫力が低下している高齢者まで、あらゆる人々を包括的に保護するため、さらに「10倍」の安全幅を見込みます。

つまり、「種差(10倍)× 個体差(10倍)= 100倍」という厳格な掛け算が成立しています。さらに、データの蓄積状況や毒性の性質(発がん性や生殖発生毒性など)によっては、食品安全委員会の評価基準により、追加の不確実性係数を掛けて1,000倍やそれ以上の安全係数が適用されるケースも珍しくありません。

石川 優花
著者

石川 優花

心身ともに健康で持続可能なライフスタイルをテーマに、最新のウェルネストレンドを発信中。