本作の筆を執ったのは、名匠・ありま猛。かつてあだち充のアシスタントも務めた実力派であり、その描線は極めて親しみやすく、愛嬌に満ちている。だが、その温もりあるタッチこそが、読者の警戒心を麻痺させる最大の罠だった。
主人公の日高進介は、もともと真面目な高校教師だった。失踪した妻の借金を背負わされ、幼い息子を連れて妻を探す旅に出たはずが、いつしか自身がパチンコの泥沼へと堕ちていく。進介の恐ろしいところは、劇画調の凶悪犯のような顔をしていないことだ。常に穏やかな笑顔を浮かべ、腰が低く、悪意のかけらも見せない。それにもかかわらず、繰り出す行動のすべてが周囲の人間関係を焼き畑のように灰燼に帰していく。