NHK総合のドラマ10枠で放送された『恋せぬふたり』は、彼女のキャリアにおけるもう一つの重要な金字塔と言える。アロマンティック・アセクシュアル(他者に対して恋愛感情も性的欲求も抱かない人々)を当事者研究の緻密な取材に基づいて描き、第59回ギャラクシー賞テレビ部門大賞を受賞した。
従来のテレビドラマが自明の前提としてきた「恋愛至上主義」や「家族のあり方」に真っ向から問いを投げかけたこの作品は、生きづらさを抱える現代人にとって救いとなるメッセージを提示した。世間の「普通」に馴染めない人々の葛藤を無理にドラマチックに煽るのではなく、静かで確かな熱量を持った日常のやり取りとして昇華させる。この脚本力こそ、視聴者の心を捉えて離さない最大の理由である。