ハクが取り戻した本当の名前「ニギハヤミコハクヌシ」。スタジオジブリの公式設定および関連書籍における漢字表記は「饒速水琥珀主」と記されます。この一見すると難解な文字列には、古代日本語の言霊と、彼が司っていた自然そのものの姿が凝縮されています。
漢字を一文字ずつ分解して紐解くと、その意味の深さがより鮮明になります。
- 饒(ニギ):「豊饒(ほうじょう)」という言葉があるように、豊かであること、満ち足りていることを示します。
- 速(ハヤ):水の流れが速いこと、勢いよく清らかな水が巡る様子を表します。
- 水(ミ):「水(み)」そのものを指し、生命を育む水源の象徴です。
- 琥珀(コハク):千尋がかつて住んでいた街を流れていた「コハク川(琥珀川)」の名。樹液が化石化した宝石のように美しく澄んだ輝きを意味します。
- 主(ヌシ):その土地や水域を守護し、束ねる神(土地神・主神)を意味します。
すなわち、饒速水琥珀主という名は「豊かで勢いのある清流・コハク川を司る神」という極めて尊い神格を表しています。劇中でハクが湯婆婆の弟子となり、自らを失っていたのは、人間たちの都合による宅地造成でコハク川が埋め立てられ、自らの住処(川)とアイデンティティを同時に奪われてしまったからに他なりません。