「よそう」を漢字で書くと「装う」となる。衣服を着整える「装う(よそおう)」と同じ漢字であり、語源も同一だ。もともとは「物装う(ものよそふ)」という古語に由来し、「必要なものを準備する」「美しく配置して整える」という意味を持っている。つまり、単にご飯を茶碗に入れる作業ではなく、食べる人への敬意を込めて食卓を整える行為そのものを指しているのだ。
これに対して「盛る」は、高さを出したり量を積み重ねたりする動詞である。「てんこ盛り」や「盛り付け」という言葉が示す通り、量感や視覚的なボリュームを強調する際に使われる。一方で「つぐ」は「注ぐ」あるいは「継ぐ」に由来し、主に液体を器に注ぐ動作や、途切れさせずに足し続ける動作を指す。お酒やお味噌汁には「つぐ」を使うのが自然であり、ご飯に対して「つぐ」を用いるのは一部の地域方言に限られる。
日本語学的な視点から見ても、これらの使い分けには明確な美意識の線引きが存在する。茶碗にご飯をふんわりと品よく配置する動作を「装う」と表現した先人たちの感覚は、言葉の中に美を宿す日本独特の感性と言えるだろう。