音無響子というヒロインを語る上で、惣一郎の死は避けて通れない。彼女は高校時代の恩師であった惣一郎と結婚したものの、わずか半年余りで夫を病気で失ってしまう。その悲しみから立ち直れぬまま、彼女はボロアパート「一刻館」の管理人に就任する。つまり『めぞん一刻』は、一人の女性が喪失のどん底から新たな一歩を踏み出すまでの長大な「再生の物語」なのだ。
亡き夫の影は常に響子の心を縛り付け、新しい恋へ踏み出す足を止めさせた。墓参りのシーンや、墓前で吐露される本音の数々は、単なる恋愛漫画の域を超えた深い人間ドラマを描き出している。読者が彼女の幸福を心から願ったからこそ、死の影に対する過剰な反応が時を経て死亡説へと変貌したのだろう。