物語の舞台は昭和3年(1928年)、瀬戸内海の小豆島にある小さな岬の分教場。新任の女性教師として赴任してきた大石久子先生は、自転車に乗って洋服姿で現れたモダンな女性でした。当初は村人から物珍しさと警戒の目で見られますが、先生の純粋な優しさと情熱は、入学したばかりの12人の小学1年生(24個の澄んだ瞳)の心をすぐに掴み取ります。
アキ、マスノ、コトエ、磯吉など、愛称で呼び合う子どもたちと先生の間には、家族以上の深い絆が育まれていきました。しかし、子どもたちが本校へ進学し、大石先生も怪我を機に本校へ異動する頃、日本は次第に軍国主義と戦争の暗い影に覆われていきます。
「アカ(共産主義者)」のレッテル貼りを恐れる教育現場に絶望した大石先生は一度教職を退きますが、その後始まった太平洋戦争は教え子たちの日常を無情にも奪い去りました。男の子たちは次々と戦地へ送られて命を落とし、女の子たちも貧困や病に苦しめられることになります。
戦争が終わり、昭和21年(1946年)。再び岬の分教場に復職した大石先生のもとに、生き残った教え子たちが集まります。歓迎会で先生に贈られたのは、かつて先生が乗っていた懐かしい自転車。しかし、その場に揃ったのはかつての半数ほどであり、失明した教え子が昔の集合写真を指でなぞる場面で物語は幕を閉じます。この「取り戻せない命と時間の重み」を描いた結末こそが、読者の涙腺を激しく刺激する理由となっています。