本作が持つ唯一無二のリアリティと温かさは、実力派キャスト陣の声の演技によって支えられています。
主人公の花を演じた宮崎あおいは、どんな逆境にあっても笑顔を絶やさず、子どもたちを無条件で包み込む母親像を透明感あふれる声で見事に表現しました。特に、去り行く雨に対して叫ぶ「まだ、あなたに何もしてあげてないのに!」という悲痛な叫びは、母親の無償の愛と喪失感を完璧に捉えた名演として高く評価されています。
そして、物語序盤で姿を消しながらも全編にわたって存在感を放ち続ける父親役を演じたのが大沢たかおです。寡黙でありながら底知れぬ優しさと孤独を漂わせる低音ボイスは、花が惹かれた「おおかみおとこ」の哀愁と誠実さを短い登場時間の中で見事に成立させました。
さらに、田舎暮らしの厳しさと知恵を授ける頑固老人・韮崎役を務めた故・菅原文太の重厚な存在感など、プロの声優陣と名優たちが融合したアンサンブルが、細田ワールドの生命力となって息づいています。