『昭和元禄落語心中』に対して「気持ち悪い」「生理的に無理」という声が上がる背景には、主に3つの決定的な要素が存在します。一般的な少年漫画やエンタメ作品の枠組みを大きく超えた、あまりにも生々しい人間描写が読者の倫理観を揺さぶるためです。
第1の理由は、小夏の子供の父親にまつわる近親相姦を想起させるタブーの描写です。親世代から引き継がれた因縁が、もっとも受け入れがたい形で具現化した瞬間、読者は激しい生理的嫌悪と背徳感を突きつけられました。
第2の理由は、みよ吉・八雲・助六の間で繰り広げられる泥沼の愛憎劇です。色街の情念、当てつけのような肉体関係、そして心中へと向かう破滅の狂気は、昼ドラ以上のドロドロした重圧感を放ちます。
第3の理由は、落語という伝統芸能に憑りつかれた男たちの狂気と死の匂いです。名席『死神』に象徴されるように、命を削って芸に殉じる八雲の妖艶さと執着心は、美しくもどこかおどろおどろしい恐怖を抱かせます。