幹の途中から突如として小さな芽が無数に吹き出す現象を目撃したことがあるかもしれません。園芸や造園の世界で「胴吹き(どうぶき)」と呼ばれるこの現象は、一見すると生命力が旺盛に見えますが、植物生理学的には木が深刻なストレスに晒されている危険サインです。
木の幹から急に芽が出る理由は、枝先の剪定のしすぎによる葉量不足、根詰まりや根腐れによる吸水力低下、あるいは幹内部の通水障害により、樹木が自らの生命を維持しようと緊急避難的に休眠芽を目覚めさせていることにあります。胴吹きの芽を放置すると本来の主枝へ送るべき養分が奪われ、樹形が乱れるばかりか上部の枝枯れを加速させるため、不要なものは早めに手で摘み取る「芽かき」の対処法が必要です。
また、木の幹の樹皮が剥がれるトラブルも頻発します。成長に伴う自然な脱皮(サルスベリやプラタナスなど)であれば問題ありませんが、樹皮がめくれた内部が黒ずんでいたり腐敗臭がしたりする場合は、凍害や日焼け(強烈な直射日光による組織死)、あるいは腐朽菌の侵入による壊死が考えられます。樹皮が広範囲に剥がれ落ちると形成層が乾燥して再生不能になるため、癒合剤(ゆごうざい)を塗布して傷口を保護することが不可欠です。
なお、幹の北側や湿った根元にコケが生える理由については、空気中の胞子が適度な湿度と日陰環境を得て着生したものであり、コケ自体が木から直接養分を吸い取る寄生植物ではありません。ただし、幹全体が分厚いコケに覆われている状態は、水はけの悪さや風通しの不良を意味し、害虫の格好の隠れ家になるため、適度な間引き剪定で日当たりを改善するのが賢明です。