なんば・千日前エリアには数多くの飲食店がひしめき合っていますが、その中でも「欧風料理 重亭」の前にできる待機列は際立って目立ちます。飲食業界において効率化やファスト化が進む昨今、同店が何十年にもわたり行列を作り続ける背景には、効率主義とは対極にある妥協なき調理プロセスが存在します。
多くの飲食店では、ピーク時の回転率を上げるためにハンバーグのタネを事前に作り置きし、一次加熱を済ませておくケースが少なくありません。しかし重亭では、客から注文が入って初めて厨房内で「ペチペチ」とリズミカルに手のひらで空気を抜き、フライパンへと投入されます。この工程を守り抜くことで、挽き肉の余分な酸化を防ぎ、肉汁を一切逃さずに閉じ込めることが可能となります。
さらに、同店を語る上で欠かせないのが「文化資本」としての重みです。昭和を代表する歴史小説家・司馬遼太郎が足繁く通った洋食店としても名高く、店内には文豪直筆のサインやゆかりの品が静かに息づいています。単なる食事の場を超えて「大阪ミナミの生きた食文化遺産を体験する」という付加価値が、世代や国境を超えた幅広い客層を引きつけ続ける原動力となっています。