壁紙に黒カビを発見した際、多くの人が無意識にやってしまうのが「濡れ雑巾やメラミンスポンジで強くこする」という行動です。しかし、ハウスクリーニングの現場専門家や建材メーカーの見解では、この初動こそがカビ被害を拡大させる最大の要因とされています。
日本の住宅で普及率90%以上を占めるビニールクロス(塩化ビニル樹脂系壁紙)は、表面に細かなエンボス加工(凹凸模様)が施されています。カビは表面に付着しているだけでなく、その微細な隙間から「菌糸」と呼ばれる根のような組織を内部へ伸ばしています。ここで強い摩擦を加えると、表面の胞子が空気中に大量飛散して部屋全体へ撒き散らされるばかりか、ちぎれた菌糸がクロスの裏紙や下地の石膏ボードへと押し込まれ、かえって根深いコロニーを形成してしまいます。
さらに、研磨作用のあるスポンジでこするとビニールクロスの保護コーティングが破壊され、傷ついた凹部に皮脂やハウスダストが溜まりやすくなり、カビの再発スピードを大幅に加速させる結果を招きます。カビ取りの鉄則は「物理的な破壊」ではなく、「浸透除菌による化学的分解」であることを知っておく必要があります。