男性の体内に高濃度のエストロゲン(卵胞ホルモン)が注入されると、下垂体からの性腺刺激ホルモン分泌がフィードバック抑制を受け、体内でのテストステロン(男性ホルモン)の産生が激減します。これにより、女性ホルモン注射による男性の変化と副作用が同時に進行し始めます。投与初期に実感されやすいのは、皮膚分泌の激変です。皮脂の分泌量が著しく低下するため、長年悩まされていたニキビや顔のテカリが劇的に改善し、きめ細かくしっとりとした肌質へと変化します。同時に、体臭(特に加齢臭や男性特有の皮脂臭)の減弱が確認されます。
続いて顕著になるのが、エストロゲン注射による筋肉量と体脂肪の変化です。テストステロンの同化作用が減退することで、上半身を中心とした筋肉量が自然と減少し、力仕事での筋力低下を自覚するようになります。脂肪の沈着パターンも男性型(内臓脂肪中心)から女性型(皮下脂肪中心)へと移行し、腰回り、臀部、大腿部に脂肪がつきやすくなり、全体として丸みを帯びたボディラインへと再編成されていきます。
見落とされがちなのが、中枢神経系への作用に伴う精神面の変化です。豊胸医療やジェンダー医療を手がける南クリニックの臨床レポートでも指摘されている通り、テストステロンの低下とエストロゲンの作用によって、攻撃性や衝動的な焦燥感が和らぐケースがあります。性別の違和に苦しんできた当事者の場合、抑うつ感の改善や自傷リスクの低下といった精神的安定をもたらすポジティブな側面がある一方、ホルモンバランスの乱高下に伴い、涙もろくなる、情緒不安定に陥る、倦怠感が生じるといった更年期障害に酷似した不安定さを経験する人も少なくありません。