猫の肺水腫で最も恐ろしいのは、進行の圧倒的な速さです。昨日まで元気に走り回っていた個体が、翌日には重篤な呼吸不全で救急搬送されるケースは珍しくありません。しかし、詳細な観察を行っていれば、必ず前兆シグナルが現れています。
臨床現場において、最も客観的かつ信頼性の高い指標とされているのが「睡眠時呼吸数(Sleeping Respiratory Rate: SRR)」の計測です。
【呼吸数の正確な測り方】
猫が深く眠っている、あるいは完全にリラックスして横たわっている時に測定します。「胸が上がって下がる」動きを1回とカウントし、30秒間の回数を2倍(または1分間計測)します。
- 正常値:1分間に15〜25回程度
- 警戒レベル:1分間に30回以上(心疾患の悪化シグナル)
- 危険レベル(即受診):1分間に40回以上、または浅く速い呼吸が継続
日常的にSRRを記録しておくことで、肺水腫が本格的に発症する数日前の「肺うっ血(水分が染み出す前段階)」を捉え、緊急入院を防ぐ早期投薬が可能になります。
【猫の肺水腫・前兆チェックリスト】
- 深く寝ているのに呼吸数が毎分30回を超えている
- 横になって寝るのを嫌がり、胸を浮かせた「香箱座り」の姿勢を維持し続ける
- 食欲が急激に落ち、呼んでも動こうとしない
- 運動後に舌や歯茎の色が白っぽい、または紫色(チアノーゼ)を帯びる
- お腹を大きくペコペコと波打たせて呼吸している(腹式呼吸)
- 口を開けて「ハァハァ」と犬のように息をしている(即座に救急搬送が必要な極期症状)