一院制を採用すれば、審議にかかる時間や莫大な議員報酬といった国費を大幅に削減できます。それにもかかわらず、日本国憲法が二院制を採用し続けるのには、歴史の教訓に裏打ちされた合理的な二院制の理由があります。
最大の目的は、「権力の過度な集中と多数派による暴走の抑止」です。一院制の場合、ある選挙の熱狂によって単一の政党が過半数を握ると、極端な法律案であっても短期間で強行採決できてしまいます。大正から昭和初期にかけて軍部が台頭し、議会が歯止めをかけられなかった反省から、立法府の内部にお互いを監視・抑制し合うチェック機能を設ける必要がありました。
もう一つの重要な意義が、参議院に期待されている「良識の府」「再考の府」としてのブレーキ機能です。衆議院は政権交代の舞台であり、常に激しい政争や次期選挙の票読みにさらされています。一方、解散がなく6年間の身分が保証されている参議院は、党利党略から一定の距離を置き、専門的な見地から法律案の欠陥を洗い出す役割を託されています。
法案が衆議院を通過しても、参議院で丁寧な公聴会や委員会審議を経る過程で問題点が浮き彫りになり、修正や廃案に至るケースは少なくありません。二重の審議を行うプロセスそのものが、拙速な法改正から国民生活を守る防波堤となっています。