『ワンパンマン』の根底にあるのは「どんな強敵もワンパンで終わる」というアンチクライマックスの面白さです。しかし、このプロット構造こそがワンパンマンがグロい理由の核心に深く結びついています。
サイタマの規格外の強さを際立たせるためには、敵である怪人がどれほど冷酷非道で、一般市民や他のヒーローたちをどれだけ圧倒的かつ絶望的に蹂躙したかを描き切らなければなりません。怪人の凶悪さを提示するプロセスにおいて、必然的に犠牲者の身体損壊や凄惨な拷問的戦闘が不可欠となる構造が存在します。
さらに、原作ONE版と村田版の違いも決定打となっています。原作者・ONE氏が描くWEBコミック版は、極限まで簡略化された脱力感のある描線が特徴であり、人体が吹き飛ぶ描写があっても記号的な表現にとどまっていました。ところが、となりのヤングジャンプで連載されるリメイク版(村田雄介氏作画)では、骨格や筋繊維、血管の質感に至るまで超絶技巧のリアリズムで描かれます。この「劇画級の精密描写」と「容赦ない破壊」の融合が、読者の視覚と精神に強烈なトラウマを植え付ける主因となっています。